ドーピング関連の記事を読む上でとても重要なのが常時禁止であるか、競技会時禁止であるかです。
これらは、WADA(世界アンチ・ドーピング機構)が毎年規定している禁止表国際基準の中に記載されている禁止項目の種類です。
INDEX
常時禁止物質、方法とは
常時禁止物質、方法は競技会に関係無く禁止されています。
具体的には競技会の時の検査と競技会外検査(いわゆる抜き打ち検査)のどちらかで陽性反応が出た時に違反となります。
「抜き打ち検査の対象じゃないから大丈夫でしょうか?」
ドーピングは尿検査または血液検査での結果を証拠として使います。そのため、抜き打ち検査対象者(RTPA)でない選手は、実際に検査をされることがないため違反(陽性)となることはありません。ただし、常時禁止物質が体内にある状態で競技会の時の検査を受けた場合は検出されますので違反(陽性)となります。
抜き打ち検査はされませんが、モラルの問題として常時禁止物質は使わないようにしましょう。治療上やむを得ない場合はTUE申請をおこなってください。
RTPAとTUEについては以下の記事でまとめています。
常時禁止物質、方法の種類
SはSubstance(物質)、MはMethod(方法)です。
S0.無承認物質 S1.蛋白同化薬 S2.ペプチドホルモン、成長因子、関連物質および模倣物質 S3.ベータ2作用薬 S4.ホルモン調節薬および代謝調節薬 S5.利尿薬および隠蔽薬 M1.血液および血液成分の操作 M2.化学的および物理的操作 M3.遺伝子ドーピング
競技会時に禁止される物質とは
競技会の時の尿検査で陽性となった場合、違反となる物質です。
抜き打ち検査で陽性となっても違反は問われません。
そのため、競技会までに体内から抜けていれば問題とはならず、常時禁止物質、方法に比べて日常生活を制限しません。
競技会時に禁止される物質、方法の種類
S6.興奮薬 S7.麻薬 S8.カンナビノイド S9.糖質コルチコイド
※方法(M)はありません。
特定の競技において禁止される物質
2018年からはベータ遮断薬のみが対象となりました。
ベータ遮断薬は、以下の競技種目において競技会(時)に限って禁止される。指示がある場合は競技会外においても禁止される。
アーチェリー(国際アーチェリー連盟:WA)*
自動車(国際自動車連盟:FIA)
ビリヤード(全ての種目)(世界ビリヤード・スポーツ連合:WCBS)
ダーツ(世界ダーツ連盟:WDF)
ゴルフ(国際ゴルフ連盟:IGF)
射撃(国際射撃連盟:ISSF、国際パラリンピック委員会:IPC) *
スキー/スノーボード(国際スキー連盟:FIS)ジャンプ、フリースタイル(エアリアル/ハーフパイプ)、スノーボード(ハーフパイプ/ビッグエアー)水中スポーツ(世界水中連盟:CMAS)コンスタント-ウェイト アプネア(フィンあ
りフィンなし)、ダイナミック アプネア(フィンありフィンなし)、フリーイマージョン アプネア、ジャンプ ブルー アプネア、スピアフィッシング、スタティック アプネア、ターゲットシューティングおよびバリアブル ウェイト アプネア
*競技会外においても禁止される
ベータ遮断薬には緊張や不安感を抑える作用もあります。
そのため、緊張やメンタルによって大きく競技成績が変わるスポーツで禁止されています。
監視プログラム
監視プログラムとはその名の通り、検査結果から出た場合、使用状況が監視されています。
監視されているだけでその年度内は禁止ではありません。特に手続きを踏むこと無く使っていただいて大丈夫です。
しかしながら、翌年以降禁止物質に昇格するケースもありますので翌年の禁止物質国際基準が改訂された時は速やかに確認をする必要があります。
2015年にメルドニウムは監視プログラムでしたが、2016年にS4.ホルモン調節薬および代謝調節薬に昇格し、常時禁止物質となりました。
2017年もS4の常時禁止物質です。
これに引っかかってしまったのがテニスのマリア・シャラポワ選手です。
〆
競技者自身がどのカテゴリーの物質を摂取しているか把握しておくことはドーピング違反をしてしまわないためにとても大切なことです。
特に、ドーピングは毎年違反の基準が変わるため常に確認する必要があります。