本当に公平?JADAもWADAもそろばんをはじく

スポーツファーマシストの奥谷元哉です。

この比喩表現をツイッターで書きましたが、あまり正しく理解されませんでした。

これはJADAもWADAも違反した人間やその人間が所属する団体によって対応や処分にバラつきがあるという意味です。

ここ2年、JADAは競技スポーツによって対応や制裁を変えている

さて前回のアナバイトの件で自転車競技の寺崎選手は最終的に4ヶ月という処分が下りました。

スポーツ仲裁機構にPDFで掲載されていますが、その中の別紙2を見て下さい。(かなり下の方までスクロール)

JADAに認証のあるサプリメントを摂取していたこと、認証が無い製品は過去に検査で陰性だった旨を主張されていますが、見事に一蹴されています。

仲裁機構から消されたらアレなので私のブログにも該当のPDFを貼っておきます。

↓前回のおさらいはこちらから↓

違反事例をメッタ斬り ギャスパリニュートリション アナバイトの事件について解説

同じく去年の事例でサンフレッチェ広島F.Cの千葉和彦選手がライフスタイル社のエグゼクティブチョイスというマルチビタミンミネラルに含まれていたメチルヘキサンアミンという興奮剤で陽性が出てしまいました。

この件は最終的には資格停止期間を伴わない譴責という処分になりました。(ただし、平成28年9月25日から同年10月21日までの競技成績は失効しています。)

事の経緯は担当弁護士のブログにまとまっています。

一昨年の事例でボディビルダー小田敏郎選手がギャスパリニュートリションのSP250でオキシロフリンという興奮剤で陽性が出て2年間の資格停止となっています。

さらに、一昨年の事例でパワーリフティングの西村義人選手がドロスタノロンで4年の資格停止となりました。

サプリメントからの混入であることを主張するために第三者機関に分析を依頼し、そのデータを携え、パワーリフティング協会の医師とともにJADAに反論をしましたが認められず。

これらを表にまとめますと、

まず、千葉選手以外はどの選手もサプリメントのコンタミを主張していますが、JADAに一蹴されています。

寺崎選手は先ほども書きましたが、JADAに認証のあるサプリメントの摂取、認証が無い製品は過去履歴を主張していますが、一旦しりぞけられています。ほとんどのアスリートが信頼しているTSPについてもボコボコに書かれているので関係者が見たら発狂するかもしれません。

特に西村義人選手は分析結果を持参しましたが、証拠として認められないとされています。

他方でJADA側の主張としては千葉選手を除く三選手の規律パネルを見ていると、海外サプリメント=危険という理由で三選手の主張をしりぞけています。

国内サプリメントであっても懸念は残りますので私はJADAがこの理由で選手の主張をしりぞけるのは理由として不十分であると感じます。

この4選手の状況を比較すると、あまりにもその対応に差があると思いませんか?

千葉選手の担当の望月氏のブログによりますと、

ドーピング違反に対する制裁処分は、JADAから独立をしているJADA規律パネルで審理され決定されます(注)。規律パネルは選手を含めた関係者の聴聞手続を開催しますので、ここが代理人のたたかいの場となります。

(注)規律パネルは、日本アンチ・ドーピング機構の所管でしたが、2015年4月から、日本スポーツ振興センターに移管されました。規律パネルは、より中立性の高い手続きが求められるため、日本アンチ・ドーピング機構から分離され独立性を強化しています。

規律パネルの決定はJADAから独立しているとありますが、JADAホームページの一番左下にあるところを気にしているように邪推してしまいます。

さらに、資格停止期間の短縮についてですが、同じく望月氏の記述にもある通りサプリメントから出てきたことによって「過失又は過誤がない=陽性であり資格停止期間が発生する」ということを覚悟されています。

しかし、制裁は資格停止ではなく、譴責に終わった。

この第2弾の検査依頼の検査結果でチーム推奨サプリメントからメチルヘキサンアミンが検出されたことの第一声は、「よかった」=うれしいでしたが、第二声は、「これで無過失は消えた」=がっかりでした。

JADA規程は、「『過誤又は過失がないこと』は、次の場合には適用されない。」として、

「(a) ビタミンや栄養補助食品の誤った表記や汚染が原因となって検査結果が陽性になった場合(競技者は自らが摂取する物に関して責任を負う(第2.1.1項)とともに、サプリメントの汚染の可能性に関しては競技者に対して既に注意喚起がなされている。)。」(規程第10.4項の解説)とされています。

この規程は、チーム推奨サプリメントが汚染されていたことが、千葉選手の体内にメチルヘキサンアミンが入った原因である場合には、千葉選手がどんなにドーピング違反にならないように注意を払っていたことを立証しても、結果責任として「過誤又は過失」が肯定されることを明らかにしています。すなわち、「過誤又は過失がない」ことは認められないのです。

百歩譲ればチーム推奨サプリメントをとっていたからかもしれませんが、それでもその推奨がどの程度の拘束力を持ったものなのかは分かりません。

推奨サプリメントメーカーは首尾一貫して混入を否定しており、推奨サプリメントメーカーの公式ホームページにもお詫びのプレスリリースすらありません。(すごく不自然です。)

第1が、製造元メーカーに対する信頼があったことです。これまで禁止物質に汚染(注)されたサプリメントが禁止物質が体内に入った原因となった事例の多くは、必ずしも信用性が高くないメーカーにより製造されたサプリメントです。

(注)「汚染製品」とは、製品ラベル及び合理的なインターネット上の検索により入手可能な情報において開示されていない禁止物質を含む製品をいう(規程、附属文書1 定義)。

チーム推奨サプリメントのメーカーは、「FDA(米国食品医薬品局)にライセンスされ、政府機関への納入権利を持つ、全米最大の天然ビタミン製造メーカーです。」と紹介されていました。

それだけでなく、このメーカーは、実際にFDAの認可を受けていました。

第2は、チーム推奨サプリメントの表示です。

成分表示に禁止物質は含まれていません。さらに、パッケージには、「この製品はドーピング規定に違反する成分は一切使用していません」との明示的な表示さえありました。

「この製品はドーピング規定に違反する成分は一切使用していません」との明示的な表示があるサプリメントは多くはありません。社会的な信用ある会社が、「この製品はドーピング規定に違反する成分は一切使用していません」との明示的な表示をする以上、メーカー側で禁止物質が含まれているか否かの検査を実施した上で、禁止物質が含まれていることを確認していると思わせる表示です。

第3は、上記2点に加えて、

(1) チームが輸入販売業者を通じてメーカーに対して、再三、チーム推奨サプリメントに禁止物質が含まれていないこと及び禁止物質に汚染されていないことを問合せ、メーカーから禁止物質は含まれていないし、汚染もされていないとの回答を得ていた事実、

(2) チームは選手に対し、(1)の確認手続を経た上で、禁止物質が含まれていないサプリメントとして使用を推奨していた事実です。

ちなみに、千葉選手の尿検体にメチルヘキサンアミンが存在したことがわかった後にも、チームはメーカーに対して複数回同じ確認をしましたが、メーカーは毅然として、サプリメントへのメチルヘキサンアミンの混入は否定しておりました。

千葉選手は、アンチ・ドーピングについて十分な知識を有していたため、サプリメントに関しては、このようにチームが安全を確認したサプリメントだけを使用していました。 ドーピング検査を受ける際には、尿検体採取前1週間の間に使用した医薬品及びサプリメントを申告する手続となっています。千葉選手は、チーム推奨サプリメントに禁止物質が含まれているなどと考えておりませんので、チーム推奨サプリメントを使用していることを申告しています。

選手に異常なまでの厳格さを求めるアンチ・ドーピングルールですが、その制裁をする側が本当に厳格で平等であるとは言い難い対応をするようです。

WADAはもっとそろばんをはじく

WADAはもっとひどいです。これは私が過去に記事にしました。

シャラポワの件ですね。シャラポワの件は特に酷かったです。

金と影響力とネゴ、これらがあるとWADAを動かすことができると証明した事案でもありました。

ドーピング違反事例をメッタ斬り解説 美人の涙に騙されるな マリア・シャラポワ

普段の私のブログと異なる風味の回でした。

これまでうっかりドーピングは存在しないとぶった斬ってきましたが、ここ2年ほどのJADAの規律パネルを見ていますとどうもそうではないなと思えるバラつきが見られたため選手の主張に寄った観点から書きました。

こうやって様々な状況を見ますと、JADAもWADAも職員は人の子ですので厳格なルール運営ができないようです。

選手に異常なまでの厳格さが求められるのでますますこのアンチ・ドーピングというゲームがいかに歪んでいるかが分かる結果となりました。

マイナースポーツであってもメジャースポーツと変わらない対応をしていただきたいと思います。

さて、次回は実際に疑いのある検査結果が出た時の対処法について今回の内容を踏まえて解説したいと思います。

 

私も競技者ですので、禁止物質が含まれていない事を検査されているPeak Performance Nutrition社のサプリメントを愛用しています。トレーニングだけでなくサプリメントの品質、安全も妥協したくない方へ!