SNS投稿が原因でドーピング違反となってしまった事例です。
ドーピング違反は通常、尿検査、血液検査の結果に禁止物質が検出された時に問われることがほとんどです。しかしながら、SNS投稿が原因でライアン・ロクテという有名なオリンピック水泳選手が違反となってしまった事例がでました。
オリンピックだけで12個のメダルを獲得したとんでもない実績の持ち主ですが、ドーピング違反についての理解は乏しかったようです。今回のケースで、14ヶ月の資格停止となりました。
私は、アンチ・ドーピングの講習会、セミナーでSNS投稿には十分に注意するよう呼びかけてきたこともあり、事例が出てくれたのはよりアスリートに理解されやすくなったと思います。
ニュース元
ライアン・ロクテ選手
何をSNS投稿してしまったのか
ライアン・ロクテ氏は、ビタミン剤の点滴をしている姿をハッシュタグ付きでインスタグラムに投稿しました。点滴という行為が違反に当たり、SNS投稿の写真が証拠となってしまいました。この点滴については、TUE申請は行われていませんでした。点滴の中身について言及されている方がネット上にいらっしゃいますが、点滴した物質の問題ではなく、点滴という「行為」が違反となりました。
禁止表国際基準のM2.2に点滴については、以下のように記載しています。
静脈内注入および/または静脈注射で、12 時間あたり計 100mL を超える場合は禁止される。但し、入院、外科手術、または臨床検査のそれぞれの過程において正当に受ける場合は除く。
しんどいから、リフレッシュしたいからという理由でのビタミン剤の点滴は、正当に受ける医療行為には該当しません。日本でもニンニク注射などの名称で疲労回復を期待して、保険外適用のクリニックで人気ですね。アンチ・ドーピングのルールが適用されるアスリートは正当な治療根拠が無く、点滴を受けますとドーピング違反となります。ましてや、それをSNSに投稿するのは自殺行為です。ライアン・ロクテ選手がこのルールを認識していれば間違いなくSNS投稿はしなかったはずです。
冒頭でも書きましたが、私は点滴が違反になることの解説とSNS投稿の危うさを過去に記事にしています。
SNS投稿をしなければ良かったのか?
SNS投稿が無かった場合、違反に問われる可能性は低かったです。違反であることには変わりないのですが、違反である動かぬ証拠がアンチ・ドーピング機構に認識されなければ違反に問われることはありません。バレなければ良いとは申しませんが、何でもかんでも発信して自身を不利な状況に追い込まないようにしましょう。
〆
承認欲求を満たしたいのは分かりますが、SNSでうかつに何でも全世界に向けて報告しないようにしましょう。医薬品、サプリメントに関する投稿は一撃アウトになる確率が極めて高いハイリスク投稿であることを知ってください。
スポンサー案件で医薬品、サプリメントの宣伝投稿をしないと行けない場合は、世界アンチ・ドーピング規定、禁止表国際基準の最新版をよく調べた上で行いましょう。自身で判断がつかない場合は、スポーツファーマシストに相談したほうが良いです。
ちょっとしたことで、選手生命を断ってしまうことがないように。
世界アンチ・ドーピング規定、禁止表国際基準へのリンク